AIに負けない子にするために

2018年6月2日

Vol.751

 

つばめ学院の関口です。

 

今日は少し怖いお話をしようと思います。心構えをして是非読んで下さい。

 

先日、「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」という本を読みました。

かなりショッキングなタイトルですよね。

 

 

教科書が読めない子どもたち

まず、上記の本の概要を私なりにまとめます。

 

著者は新井さんは数学者であり、また「コンピューターは東大に合格できるか」というプロジェクトを率いたリーダーの方です。

前半では通称「東大ロボくん」プロジェクトの内容が紹介されています。

結論として、「東大ロボくん」は東大合格を果たせず断念するのですが、中程度以上の偏差値を獲得することに成功します。

その経験を通じて、「AIにできること(今後を含む)」と「AIでは到底なしえないこと」についての紹介があります。

 

AIで何でもかんでもできる、という訳ではない。

「人間にしかできない領域がある」という希望の持てる展開で折り返します。

 

そして、はたと疑問が出ます。

「人間にしかできないこと。って、、、本当に子どもたち(大人も?)はできてるの?」

と。

その疑問にこたえるべく大規模な調査を実施した結果。

 

「AIにできない事」は、実はいまの子もできていない、、、という事が分かります。

 

 

それってどういう事?

調査に使われた例題をご紹介します。

 

次の文を読みなさい。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

Alexandraの愛称は(      )である。

 

①Alex ②Alexander ③男性 ④女性

 

 

【出典】新井 紀子. AI vs. 教科書が読めない子どもたち (Kindle の位置No.2502-2508). 東洋経済新報社. Kindle 版. 

 

正解は①です。

正直、なにが難しいんだ?と思いました。

 

そして、この問題を私も教室で質問してみました。

 

すると、教室でも本書と同じ事が起きたのです。。。

 

たまたま居合わせた8人の中学生8人にこの問題を解いてもらいました。

なんと正解者は1人でした。

ちなみに、生徒たちの学校での成績は決して悪くないのです。

それでもこの問題は圧倒的多数が間違えたのです。

 

驚くべきことです。

 

 

「教科書を読む」とは?

本書の終わりは「教科書を正しく読む」という事の重要性を強調していました。

また、「教科書さえ」読めれば、その後の自主的な努力で学力は上げられるという希望が書いてあります。

 

この「教科書が読めない」という感覚は、私の現場での感覚と一致します。

試しに「教科書を読めているか」をご家庭でもチェックしてみて下さい。

 

教室にあった、東京書籍の地理に教科書を例にとって、「教科書が読める」の意味を私なりにお伝えします。

 

 

p.54

[南アジアで急速に成長するインド]

インドの急速な成長を支えているのは、英語や数学の教育水準の高さです。技術者を育てるために国や州が多くの援助をしています。情報技術を身につけたインド系の人々は、アメリカ、ヨーロッパ、日本など、世界各地で活躍しています。

 

【出典】新編 新しい社会 地理.東京書籍

 

この文章を「読めない」と自分から言う子は、実は皆無なんです。

 

「みんな教科書はちゃんと読めてる?」

「教科書くらい読めますよ〜」

「おっけー。じゃあさ、この文章の1つめの文はどういう意味?」

「え?意味?それは、、、”インドの急速な成長を支えてるのが、英語と数学の教育水準だ”って、ことです」

 

こういう答えをする子は実は多いです。

これを「読めてる」とは言いません。「読み上げてる」だけです。

そこで、こう返します。

 

「それじゃあ、教科書の文章のままじゃん。別の言葉で言い換えてよ。」

「え?別の言葉ですか??えっと、、、、」

 

と、つまってしまいます。難しい話ではないはずなんです。

 

「まず”急速な成長”ってあるじゃん。だから、例えば5年前のインドといまのインドを比べると、街にビルが増えた。とか、金持ちの人が増えた。とか、そういう事でしょ。で、なんでそんなに急にできたのかっていうと、”教育水準の高さ”なんでしょ。つまり、10人のインド人がいれば、7〜8人は英語がペラペラとか、7〜8人は数学の微分積分が普通にできる。とか、そういう事が理由なんだ。って話じゃないの?」

 

と説明すると、驚くほど多くの子が「おぉ〜!」と反応します。

 

読めてないじゃん!!

 

という事なんです。全く中身のイメージができていない。

文字を読んで、その内容の意味する事を頭に描けないという事は、まさにAIと同じという事です。

塾では、まず「読める」という意味の理解から始めています。

そして、社会に限らず英語や数学も。「人に説明できるか?」という観点で理解度をはかります。

おそらく、そういう一つ一つの積み上げが「読める」という力を作り上げるのだと考えています。

 

「教科書を読めるか」という事がお子さんの今後の成長を大きく左右するのかもしれません。

 

お子さんは教科書を読めていますか?

 

 

最後まで読んで頂いてありがとうございます。