塾には物語がある

2019年6月5日

vol.803

 

つばめ学院の関口です。

 

突然の質問になりますが、、、

「10秒の壁」という言葉をご存知でしょうか?

これは、陸上の100m走において9秒台の記録を出すという事が非常に困難であった頃の表現です。そして不思議な事ですが、この9秒台の記録が一度出てしまうと、その後はそれを更新する記録が続々と出てきました。

 

これは陸上競技に限ったことではありません。

「これは無理だろう」と思っているうちは、なかなかその壁を破ることができません。

しかし、「誰か」がその壁を破ってしまうと、他の人にも「できるかも」という気持ちが生まれ、多くのブレイクスルーが続くという事は珍しい事ではありません。

 

今日はそんなお話を書きます。

 

 

中間試験のMVP

今回の中間試験、つばめ学院では多くの生徒が大きく躍進してくれました。

成績優秀者の名前を壁に貼って表彰するのですが、その紙を貼るスペースがなくなる程の勢いなんですね。

 

さて、その中で塾生の全員がMVPと認める子がいます。

それが中2の「タケシ(仮名)」です。

入塾してからは間もないのですが、その人懐こいキャラで学年の上下を問わず声を書けられるマスコット的な存在です。

入塾したきっかけは学力の不振でした。

そのタケシが、今回の中間試験では5科合計で100点以上の得点アップを果たしました。

 

勉強が苦手だったタケシが100点も点数をアップさせた。

それは、友達にとっての大きな衝撃であり、タケシにとっての大きな自信になりました。

 

 

数日前の教室にて

「いや〜、今回は本当にみんなが頑張ってくれたよな!俺としても嬉しいよ」

今回の成績優秀者を授業前に紹介しようと私が話し始めると同時に、タケシはピクっと反応します。

「ほら、そう言っただけなのに、タケシは自分の事だと思って反応してくれてるよ」

(教室内にどっと笑いが起きる)

 

「でも本当にそう。タケシが今回のMVPだって、異論のあるヤツはいないと思うんだよ。」

 

「タケシ!今回の学年順位、お前ここで言えるか?」

「はい!153位です!」

タケシは誇らしげに即答してくれました。

 

「みんなどう思った?いまのタケシの顔を見たか?」

誰も反応しません。そして続けます

「あのさぁ、順位の番号なんてどうでも良いよな。いまここにいるヤツの中で、タケシみたいに誇らしい顔して自分の順位をはっきり言えるヤツが何人いるんだろうな。それが一番大切なんだよ。自分のできる事を精一杯やってさ、そんで自分の納得できる結果が出たら、みんなも胸張って自分の結果を言えるんじゃねーか?」

 

 

塾には物語がある

タケシの頑張りに触発されて、私はさらに話しを続けていました。

 

「いつか、さあ。タケシがワコク(和光国際高校)に受かって、"俺も最初は全然ダメでさぁ"とか言う日がくるのかもね」

教室のあちこちから声が飛んできました。

 

「センセイ、何言ってんだよー!タケシがワコクなんて」

「いくらんなでも冗談きついよ!」

「タケシ!お前、ワコク行くのかよ(笑)」

 

完全に狙い通りでした。タケシは笑顔のまま、少しバツが悪そうではありましたけど。

 

「なんだよ、お前ら今でも塾に来てるケイタ(仮名)のこと知らないの?」

「え?あ、ああ、ケイタくんですか。知ってますよ。サッカー部の先輩だし。」

「ケイタはワコクだぜ」

「知ってますよ。ケイタくん、ワコクでサッカーやりながら勉強もやってるんですよね」

 

「この間の試験で、ケイタの英語が学年で何位だったと思う?」

「え?わかんですよそんなの。ケイタくん、結構できそうだけど。。。」

「学年で1位だよ。ワコクの一番だよ。」

「すっげー!!やっぱ、ケイタくんはすげーなぁ」

中学生達が一気に盛り上がりました。

 

「じゃあ、もう一つ質問する。ケイタが中2で入塾した時の中学での学年順位を知ってるか?」

「知るわけねーじゃん!先生。ケイタくんが中2の時って、どんだけ前だよ(笑)」

「190位だよ」

「え?」

「だから、190位。いまのタケシと比べてもはるか後ろ。」

 

「だって、、、ケイタくんはワコクに受かってるし、いまはそこで一番なんでしょ?190位からそんな事できるんですか?」

「できるかできないか、で言ったらできるんだろうね。ケイタがやったからさ。簡単じゃないよ。あいつがワコクって口にした時はまわりのみんなからバカにされたみたいだし。でも、できた。スッゲー苦しい思いをしたのも俺は知ってるし、ずっと見てた。でもできた。できただけじゃなくて、そのまま高校でも頑張った。そしたら一番になった。それが現実だからな。」

 

ここまで、にやにやしていた子達は、どう反応して良いか分からない表情をしていました。

そして、タケシの目がランランと輝いてきた事を私ははっきり見ました。

 

「聞きたい事があれば、俺じゃなくてケイタに聞けよ。あいつは良いヤツだからきっと話を聞いてくれるよ。せっかく同じ塾にいるんだから、そいういうチャンスを活かさない手はないよ。ビビんなくて大丈夫だよ。どーせ、190位だから(笑)」

 

いままで同じような状況にいた後輩がケイタに相談を持ちかけた事は何度もありました。

そして、最後に言う事が決まっているんです。後輩の質問に一通り答えた後にケイタは必ず言います。

 

「大丈夫!俺にだってできたんだから。お前なら絶対にできるよ!」

 

この教室では「いわゆる奇跡」が割と頻繁に起こります。

「誰か」ができたと証明すると、その後に「できる」と信じた後輩が続々と記録を更新するんです。

 

 

最後まで読んで頂いてありがとうございました。