2019年6月10日
vol.806
つばめ学院の関口です。
先日、さくら個別の國立先生が生徒の語彙力低下に警鐘を鳴らしておられました。
非常に鋭いご指摘であり、またビジュアルとして分かりやすい説明のブログなので、是非ご一読頂ければと思います。
今日はその流れに乗らせて頂いて、私なりに感じることを書いていければと思います。
「どの語」が不足するの?
ひとことに「語彙力が不足している」といっても、どういった語が不足しやすいのかを知ることは大切なのではないかと思います。
「不足しがちな栄養素」と同じ感覚で「不足しがちな語彙」ですね。
明確な証拠があるわけではないですが、私が感じているのは「抽象語」に対する知識は意識しないと圧倒的に不足すると思っています。
「具体的な語」というのは日々の会話、テレビ、YouTube、マンガなどからいくらでも得ることができます。しかし、「抽象的な語」というものは少し背伸びしながらでないと、なかなか増えないのではないかと思っています。
非常に簡単な例えを示すとすれば、
あまおう→イチゴ→果物→食べ物
が、言葉の抽象度をあげたイメージです。
「抽象語」は言葉の高速道路
直前であまりに簡単な例を上げましたが、ここで是非ともお伝えしたい点があるんです。
それは、
「抽象度が上がるほど、示すものの幅が広がる」
という事です。
具体的な語は、その分かりやすさと引き換えに「表現する対象の幅」を狭めています。
つまり「具体語」ばかりで話をすると、細かい範囲の話しかできないという欠点があると思っています。
ちょっと次の意見文をサンプルとして読んでみてください。
「日本の食料自給率が低下していることはやはり問題だと思います。それは、もちろん食料の供給先から何らかの理由でその供給が絶たれた場合の事を心配しているからです。供給を絶たれるといっても、自国と相手国が戦争状態になるような事を想定しているのではありません。自国と相手国が良好な関係を保っていたとしても、その供給を中継するところで紛争などが起きれば、やはり供給は滞るのです。それは、かつて日本の石油が中東に依存していた頃に中東地域の治安が悪化し、日本への供給路が絶たれたことでも経験済だと思います。・・・・」
正直、中身はどうでも良いです。
今日のブログで感じて頂きたいと思ったのは、その「スピード感」と「範囲」です。
抽象的な言葉が続く文章(話)というのは、短い文章で広範囲について語ることができます。
ほんの少し語るだけで、話が一気に進むのです。
これは「言葉の高速道路」と表現して良いのではないでしょうか。
具体的な言葉だけでは、話は遅々として進みません。しかし、抽象的な言葉を使いこなせれば、同じ時間で圧倒的に多くの事を語れます。あっという間に遠くに行ける「高速道路」そのものなんです。
プロトコルを合わせろ
やっと結論に入っていきます。
私がコンサル会社に在籍していた時の上司の言葉に「お客様とプロトコルを合わせろ」という言葉があります。
コンサルタントとしてお客様の会社にうかがって、一緒に仕事を進める最初に意識するべき事ということで言われました。
「プロトコル」というのは情報工学の分野では「通信規約」と言われて、情報をやりとりするときの「決まりごと」です。
つまり、「プロトコルを合わせる」ということは、相手の使う言葉をよく理解してそれに合わせろ。という事です。
お子さんが社会人になり、取引先と話をする場面を思い描いてみてください。
相手が「個人商店」の方であれば、具体的な言葉で十分かもしれません。なぜなら、その相手が伝えようとする事の多くはその「個人商店」の範囲内の話ですから。
では相手がチェーン店のオーナーだったらどうでしょうか?これも変わらないかもしれません。自分のお店のお話が中心になりそうです。
では、チェーン店のエリアマネージャーが相手ならどうでしょうか?自分が持つ「エリア」に共通する話をしたいはずです。
そのチェーン店の社長と話すとしたらどうでしょうか。全国のチェーン店全体を考え、そこに共通する言葉で話をするはずなんです。
では、相手が「チェーン店ビジネス」を管轄する経済産業省の公務員だったらどうでしょうか?
世界でチェーン店を展開するビジネスの担当者ならどうでしょうか?
彼ら・彼女らは日々「広い範囲」について「本質的」な話をしたいと考えているはずです。
そういった人たちと「プロトコルを合わせる」ために抽象語は不可欠なはずです。
意識的に「語彙を増やす」学習は、この「抽象語」に対して圧倒的に強くなります。
具体的な言葉だけで十分、と言ってしまえば、その子の世界は「具体語の範囲」になります。
「抽象語」を使いこなす世界はジェットコースターのような速度でその世界を変えていきます。
その速度を楽しめるかどうか、それが「語彙力」にかかっているのだと思っています。
最後まで読んで頂いてありがとうございます。