「やりたい!」を見つける方法

2020年10月26日

vol.870

 

つばめ学院の関口です。

 

今日のお話は正直に言って、生徒ウケが良くないです。

あんまり興味を持ってくれないみたいです。

でも大切な事なので、何度かお話をしています。

 

ちなみに、生徒ウケが良い話題は

「今オレが中学に戻ったら絶対やる、大人になって分かったモテる法則」

とか

「金持ちと結婚するために絶対に必要なこと」

とか、そういう話題です。

 

 

探さないと見つからない

私はいま塾長として保護者の皆様とお会いしてお話をお伺いしています。

圧倒的に多いご意見としてあるのが、

「自分が好きなことを見つけて、それをうまく仕事に活かしてもらえれば」

というものです。

 

ニュアンスの違いはあれど、ほとんどの保護者の皆様がそうおっしゃいます。

私自身が中学の頃はどうだったかな、と思い返してみますが、ここまで多数派ではなかったような気もします。

 

では、生徒に聞いてみるとどうでしょうか?

「将来、どんな事をしたい?何が好き?」

この答えですが、圧倒的なトップは

「わかんない」

です。

 

なんか、切ないですね。。。。

でも事実として「何がしたいか分からない」や「まだ考えていない」という生徒が多い事は事実です。

自分のやりたい事を聞いて、「まだ考えてない」と答えられても困ってしまいますね。

「やりたい事」だから、、、「考え」なくて良いし。

 

ここまでで分かることが1点あります。

いまの小中学生にとって、「将来のやりたいこと」というのはどうやら探さないと見つからないようです。

良い、悪いではなく。

とりあえず意識はしておいてもらわないと、いつまでたっても「わかんない」と言われそうな雰囲気があります。

 

「将来のやりたい事」は、探さないと見つからないものなのです。

 

 

逆から考えるのもアリ

「やりたい事」が見つからないのであれば、「やりたくない事」を明確にしていく。

そんな方法もあります。

私も若き日にそんな研修を受けた記憶があります。

 

「やりたくない事」について、ある女子生徒のお話をしようと思います。

(すでに卒業した元生徒ですが)

とても興味深い形で「やりたい事」を言葉にした子の1人です。

 

彼女が入塾して間もない小学生の頃に、私が質問したことがあるんです。

「将来は何になりたいの?」

すると、彼女は即答します。

 

「会計士!」

え?会計士?小学生で??

 

「会計士かぁ!でも良く知ってたね。小学生で会計士を知ってる子は少ないと思うよ。凄いね。」

「うん。会計士って、会社のお金がちゃんと記録してあるか調べる人でしょ。私、算数好きだからできそう」

 

彼女は中学に進学した直後くらいに、この「会計士」の夢は乗り換えてしまいますが、小学生の時点でこの発想に至ることが凄いですよね。

その種明かしをします。

 

よくよく話を聞いてみると、この子の「お父さん」が関係しているようです。

お父さんは「会計士」とは関係のないお仕事をしているのですが、お子さんには「しっかり勉強して、"手に職"をつけてほしい」と思っていたそうなんです。

 

そして、「一生懸命に勉強して、弁護士になると良い」と言っていたそうです。

お父さんは「弁護士」ではありません。

ただ、手に職をつける事と勉強の重要性を感じていたので、そう言っていたようです。

 

それに対する娘の反応は一つ。

「お父さんの言う通りにはしたくない」

です。

 

全国のお父さんががっくりしそうですが、彼女はそう思ったそうなです。

理由はないけど、言われた通りにはしたくない。

でも、手に職は大切な気がする。

でも、お父さんの言う通りにしたくない。

でも、勉強はした方がよさそうだし、適当な職業ではお父さんを納得させられない。

それでも、お父さんの言う通りにしたくない。

 

という事でいろいろと本人なりに調べて、行き着いた先が「会計士」だったそうです。

試験を受ける必要があることも、その試験が大変な事も本人は知っていました。

動機が不純な点はさておいても、ここまで調べて言葉にできる事は立派です。

 

こんな例を知っているだけでも、自分の意見をお子さんに「言ってみうようかな」と思う方がいてくれると嬉しいです。

 

場合によっては、親の意見に反対する形で、お子さんが将来を見出す可能性もあるはずなんです。

その意味では、「この子の好きなように」と言っているだけが、お子さんのためでもないかもしれません。

 

 

できる事を増やせ

最後にやや元も子もないお話をして終わろうかと思います。

私の個人的な思いを言うならば、学生のうちの「やりたい事」なんてものより、「できる事」を増やしておく方が圧倒的に重要な気がしています。

 

特に、やりたい事を「わかんない」と言っている子には、「できる事を増やせ」と言っています。

「できる事」を増やしていく過程で、「やりたい事」が見つかる事だってたくさんあります。

もっと言うならば、

「やりたい事」は仕事にならないけど、「できる事」は仕事になる。

つまり、

「やりたい事」で人の役には立たないけれど、「できる事」なら人の役に立てる。

という事です。

 

私はいま「塾経営」という仕事をしています。

もちろん、「やりたくてやっている仕事」であることは間違いないんです。

でも、「やりたい事だけやっている仕事」とは違います。

もちろん、ここは保護者の皆様が、ご自分を語る方が説得力があるはずです。

 

塾という場で、勉強の楽しさを語ることは大好きです。

生徒の成長を見ることが私にとっての喜びです。

保護者の皆様に感謝して頂けると力が湧いてきます。

これは、私の嘘偽りのない本心です。

 

ですが、

経費処理も嫌いだし、損益分岐点の計算は苦痛だし、資金繰り表やキャッシュフローの見通しを見るは大嫌いです。

宿題やってこない生徒が「なぜやってこないか」考えて、ふてくされている子に代替案を出している時は楽しいわけではないです。

広告宣伝の方法を考えたり、チラシの配布枚数やそれに伴うコストの計算などは、叫びだしたくなる衝動を抑えて「仕事だから」やってます。

 

多かれ少なかれ、仕事はそういうものだと思います。

「やりたい」は大切ですが、それだけで完結する仕事なんて皆無のはずです。

だからこそ、「やりたい」の気持ちを育てる以上に、「できる」を身につける事は重要なのではないでしょうか。

 

「できる」の幅が広がれば、それだけ社会にとっての存在感が増します。

「できる」が少なければ、そもそも「やりたい」に辿り着けません。

 

「できる」と「やりたい」のバランスこそが、これからの社会を生きる子ども達に大切な要素なのかもしれないと思っています。

 

最後まで読んで頂いてありがとうございます。